音楽聞く

がんばる

20230709

 

2022年の夏にイギリスのワーキングホリデービザが運良く当たった。

 

2021年の冬頃に友人とパーティーを始めてから、少しずつDJや音楽好きの友達ができ始め、イギリス入国期限の5月ぎりぎりまで東京にいることを決めた。コロナ以前はトロントでのワーホリから帰ってきたらまたどこか他の国へ行こうと考えていたので、東京に執着する未来は意外だった。

 

ただ何となくわいわい騒ぎたい、自分がDJをする場を作りたいがためにパーティーを始めたことがきっかけで、運良く人との繋がりが繋がりを呼び、少し風向きが変わった。コロナが始まってから、退屈なテレアポのバイトを半年で辞めた後の、Uber Eatsで稼ぐためにチャリを転がすか、マッチングアプリで寂しさを埋めるかの鬱屈とした日々が少しずつ忙しなくなり、すげー楽しくなった。何よりDIYレイヴを画策したり、ホームパーティで爆音を放つ物好き集団に出会したことは2022年最大の出来事だった。幸せだった。 

 

あの少しばかり生き急いでいるような感じはなんだかよかった。出国日が迫るに連れて立て続けにパーティーを企画し、たまにDJの出演依頼をもらったり、友達のパーティーに出かけたりと、とにかく楽しかった。ずっとこれを続けていられればハッピーだろうなと思っていたけれど、今ロンドンで何もやることもなくただ時間を持て余していると、あまりのコントラストに吐きそう。夢を見ていたんだと思う。5月にあった山梨でのレイヴなんかは本当に夢だった。

 

ロンドン初日から気分は最悪だった。トロントでの生活から既に3年が経っており、そのブランクからか、アジア人の少ない環境は予想していたよりも居心地が悪く、慣れるまでに時間がかかった。

 

深夜、バスの止め方を知らなかったがためにバス停でスルーされ、目がイってるおっさんに吠えかけられながら宿まで2時間かけて歩くはめになったり、BRPカード(滞在許可証)を受け取りに郵便局に行くと「まだ届いてないからまた来て」と言われ後日再訪、を二、三度繰り返した後、結局それが本部に戻っていたことが判明し、なぜか追跡番号がなく、この期間内に届きますという情報しか来なかったため、それが郵送されるまでひたすら家で待たなければいけなかったり、交通機関、宿、住居に冷房がなかったりと、雑な洗礼と幸の薄さに辟易していた。東京への執着も相まって、後ろ向きな思考に歯止めが効かなくなり、晴れた日に公園に出かけたりしても、しばらくは心に靄がかかったような状態だった。果てには帰らないと死ぬと思い、夏の日本行きの航空券を調べ、一旦帰るかもと日本の友人らにこぼしていた。

 

 

至るところでジェントリフィケーションが進んでいるロンドンの街並みは、トロントと少し似ているため既視感があり、その新鮮味の少なさが出不精に拍車をかけたのかも。それでも、やたらでかい公園とダイナミックなグラフィティーが街の至るところにあって、かつ古い建築物が多く残っている部分はとても魅力的だった。

 

わたしより一年先にロンドンに来ていた友人が気にかけてくれたり、一緒に公園レイヴを企画したりと、若干の平静を取り戻してきたような気もするけれど、働く意欲が湧かず、大概はただ家にいるか、公園に行くか、たまに日本の友達と電話をしてどうにか寂しさを紛らわす日々。

 

クラブにがんばって出かけてみても、ぴんとこないイベントが続いたり、クソセクハラ(or窃盗を試みた)客のせいで嫌な思いをしたりして、ただでさえ湧かない意欲が削がれていった。その中でもBeauty & The Beatという15年以上続く素晴らしいパーティに出会えたことはとても幸運だったが、物事の明るい部分に目を当てることが少し難しくなっていた。bumbleで教えてもらったギャラリーに行ってみたり、レコード屋に出かけたり、ごくたまに楽しいことがあっても、夏の間は憂鬱な日々が続いた。

 

また、ここに来てから自分が人見知りで出不精であることを久しぶりに思い出した。人間と交わすはじめましてが連続すると疲れてしまって、せっかく友達を紹介してもらってもその場から逃げ出したい気持ちに何度も駆られた。というかそもそも音がうるさいクラブでの人間紹介がめちゃくちゃ苦手。

 

まだ何も始めてすらいないのに、イギリスに滞在できる2年が今はただ長いとしか感じられない。新しい環境で生活と精神状態が安定するまでに時間がかかることは分かっているつもりでも、純粋に何かを楽しもうという意欲が萎んでしまったみたい。