マスとエモとハードコア2
やかましいマスロックバンド紹介の続き。
■ Pneu
フランスのギター&ドラムの2ピース爆裂技巧バンド。これを聞いたら頭を揺らさずにはいられない。手数の多さと目まぐるしい曲展開で、一聴すると無茶苦茶なようだが根底はポップ。
ベースレス、インストゥルメンタルと無いもの尽くしだが、固定概念を見事にぶち壊してくれる程にどの曲もはじけ散らかしている。ギターの手数の多さやその歪んだ音はAdebisi Shankやnoumenonに通じるものを感じる。
ビーチに直で楽器とスピーカーおっ立てて演奏する彼らのライブ動画があったが、日本もそんな個性的なDIY面白イベントあったらいいのにな。
PNEU - Derouille Party @ Le Ferrailleur (Nantes)
■NENGU
繰り出されるギターフレーズは多彩でポップ、聞き手を飽きさせない。the cabsの中村一太を彷彿とさせるようなドラムの連打が、歪んだ弦楽器とはじけて混ざる。
You Blew It!やThe Fall of Troyの来日公演のサポートアクトを務め、飛ぶ鳥を落とす勢いで大驀進中。これからより注目を集めていくであろう激マスバンド。
ベースが所属するsans visageという激情ハードコアバンドも恐ろしくかっこいい。the band apart、toeが出演する大阪でのイベントに抜擢され、こちらのバンドもヤバい。
元ネタと思われる曲
ADEBISI SHANK - ("THUNDER" A New Song - Live Studio Session)
Nengu 'Go My Bamboo' [Next Music From Tokyo Vol 8]
■ Noumenon
シカゴのマスロックバンド。上記2つのバンドのようにゴリゴリに歪んだ弦楽器が暴れ回る。こちらはシンガロングがあったりとエモの要素が強い。
フィジカルはLoose Lips Sink Sipsとのスプリットのみというのが非常に惜しい。おそらく現在は活動もしていない。需要は間違いなくあるから誰か日本呼んで!
Noumenon - Iguana In The Science Lab
邦楽の元ネタ2
曲の元ネタが分かると何故かでかい魚でも釣った気分になるが、誰かに自慢したり、共感してもらえる話でもなさそうなのでここで垂れ流す。色々調べているうちにアーティストのバックボーンが探れて楽しい!
頂(pinnacle)/Shing02
Under Me Sleng Teng/Wayne Smith
レゲエに電子音を取り入れ、革命をもたらした、らしいWayne Smithの代表曲をshing02がサンプリングしている。
原曲よりも遅いテンポで雰囲気も若干暗いが、太いベース音がビートにハマっている。
「MCの首切って口にライムを詰め込む酒鬼薔薇」 (『真吾保管計画』)
「そして日本には存在しないゲットー だから自分で探し出さなければいけない劣等感」(『課題毒書パート2』)
shing02は上記のような躊躇いのない苛烈なワードチョイスがヒリヒリする。『星の王子さま』や『少年ナイフ』のようなストーリーテリングも没入できて楽しい。
でも実際には日本にゲットーはある。
Tokyo Classic/RIP SLYME
Stress/Orgnized Konfusion
Organized Konfusion "Stress" [HD]
元ネタはNYクイーンズの2MCユニット、Orgnized Konfusion。Tokyo Classicと比べるとStressはいささか暗めだがライムとビートが段違いに格好良い。PESパートの「クラッシュ、キル、デストロイ」はこの曲のサビのリリックからそのまま引用されている。
他の楽曲でも『雑念エンタテインメント』の「ライト、カメラ、アクション」というリリックはN.W.Aの『Quiet On Tha Set』から、スチャダラパーとフューチャリングしている『レッツゴー7,8匹』のサビはA Tribe Called Questの『What?』からそのまま引用されている。
Honey/L'Arc-en-Ciel 1998年
L'Arc~en~Ciel Honey Smile Tour
Scribble/Underworld 2010年
Underworldの方がリリースが10年以上後なので元ネタもクソもないが、シンセのメロディーが似ている気がする。気のせいですね。
青のり/ブリーフ&トランクス
Organ Donor/DJ Shadow
ブリトラの青のりのイントロを聞くと何故かOrgan Donorが浮かんでしまう。ちゃんと聞くと全然ちげえわこれ。
雑念エンタテインメント/RIP SLYME 3:12〜
The Number Song/DJ Shadow 0:50〜
Spinning Wheel/Blood, Sweat, & Tears
スクラッチに使われている男性の声が一緒。Blood, Sweat, & Tearsの『Spinning Wheel』が元ネタ。
Shadowの1stアルバム『Endtroducing』は、しっとりめの曲から高速ブラストビートまで自由且つぶっ飛んだ内容で最高です。
Yentown/Shing02
Pusha Man/Chance The Rapper
Chance The Rapper - Pusha Man (feat. Nate Fox & Lili K.)
Modaji/Dave Grusin
米国のジャズピアニスト、デイヴ・グルーシからサンプリング。
Chance The Rapperも同曲を引用。出自の異なるアーティストが同じ楽曲をサンプリングしていることになにかロマンを感じる。
ほとんどヒップホップでした。
こういう気付きがあると音楽って楽しいなあという気持ちになります。
2016 ベストアルバム10枚
2016年に聞いたアルバムの中で良かったものを10枚挙げてみる。今年買った新譜はAphex Twin、Warpaint、宇多田ヒカルぐらいのもんなので、全部旧譜。
2016.12.06 The XX 豊洲PIT
The XXが来日すると聞いて、アルバムを聞き返したらいい感じだったのでライブを見に豊洲へ向かった。
まずはSBTRKTとの共演でお馴染みのSamphaが会場を温めてくれた。ピアノの弾き語りによるシンプルな演奏だったが、透き通るような歌声に呑まれた。照明も相まって幻想的なステージだった。
The XXは、ロミーとオリヴァーの囁くような、しかし力強い声が響いた。
ほとんどの曲にアレンジが施され、ビートの多くがジェイミーのパッドの生演奏であることに驚いた。たまにヨレるリズムもどこか微笑ましく、新曲はどれもダンサブルで今までとは一味違うThe XXの一面を見ることができた。次のアルバムが非常に楽しみ。
『Loud Place』、『Stranger In A Room』、『Gosh』とジェイミーのソロ曲を惜しみなく披露してくれたのは嬉しかった。『Gosh』では、ロミーとオリヴァーが手を取り合って踊っていたシーンがより多幸感を膨らませてくれた。さあ踊るぞ、と上目遣いでロミーに近付くオリヴァーが程よくキモくてよかった。
どの曲も素晴らしかったが、ベストソングを挙げるなら1st albumの『Infinity』。最後のサビの『give it up, I can't give up』の箇所で、原曲を超える爆音と尺でぶちかましていて笑みがこぼれた。静かな曲が多い中で、対照的なアレンジであったことがより楽曲を際立たせていたように思う。
この日は低音が存分に出ていて、膀胱が圧迫されてめっちゃトイレに行きたくなった。素晴らしい一日だった。
マスとエモとハードコア
マスでエモでハードコア?な、取っ付きにくいようでキャッチーなロックバンドをいくつか挙げてみる。
■Adebisi Shank
アイルランドの3ピースインストバンド。
超バカテクのギター、ゴリゴリのベース、暴れ回る弦楽器を支えるドッシリしたビート、と隙なし。ギターの多彩なフレーズ、エフェクターの使い方がかっちょいい。目まぐるしい曲構成ながら聞きやすく、アルバムごとに毛色が違うのも面白い。
ギターのLar KayeはLITEの大ファンらしく、ベースの井澤曰くLITEの海外公演で「『Ghost Dance』やるの!?」と目をキラキラさせていたとか。
ラストライブの新代田feverはそりゃもうハッピー空間でした。本当にあの時はギターが神がかっていた。きっと死ぬまで聞き続けるであろう最高のバンド。
彼らの所属するLAのレーベルSargent HouseにはblisやAnd So I Watch From You Afarなど、個性的で良質なバンドが多い。
◼︎nuito
京都の3ピースインストバンド。マイスペースでは、コンテンポラリプログレッシブマスロックとか自称していたような。そんな突飛な名前通り、曲のほとんどの構成が複雑かつ、タッピングの嵐。このバンドに出会ってからマスロックをよく聞くようになった気がする。
一インディーズバンドにしては細部に独特なこだわりがあり、個性が強い。Hinemosという曲を一定の条件?で左右のスピーカーを向き合わせると新たな音が聞こえるとか、アーティスト写真はゴミ山の中で顔の見えない3人が寝そべってるだけとか。
ホームページにも隠しリンクや、PCの画面を傾けると文字が浮かび上がる等の工夫があり、曲やライブ以外の面でも非常に楽しませてくれるバンドである。
2009年のtera melosやAdebishi Shankの来日公演のサポートアクトも務めており、活動休止前から注目を集めていた。tera melosのライブでギターのひらうにサインを求めたら、「俺はバンマスだから何してもいいんだ」と既に書いてあったリズム隊のサインにバツを付けた後、でかでかと自分のサインを書いてくれた。
最近、7年振りに活動を再開したらしく、新宿MARZでのライブを見たが演奏はまるで衰えておらず、以前のライブではスカスカだったMARZ(Adebishi Shankのライブ)がパンパンになっていて感極まった。彼らのライブは何度でも拝みたい。
NUITO - NUITO ARE BACK.′ @TOKYO MARZ 2016/6/19
◼︎1994!
ペンシルバニアの2ピースバンド。暑苦しくダミ声で吠えるボーカルと手数の多いギターはsnowingやcastevetに通じるものがある。
どの音源も大体音質が悪いが、ライブ動画を見てると客と組んず解れつのぐちゃみそでその空気感に近いのかも。
LP『fuck it!』には、フォトブックにツアーやライブの写真が付いていてワクワクする。
エモリバイバル系のバンドは日本で流通しているフィジカルの数が少なく、ディストロで見つけても売り切れていることが多いのが如何ともしがたい。
1994! - SOUR THANKS MAN - THE PEEL, KINGSTON 27th JULY 2011
どれも最高す。生きてて良かった。
もっと生きてて良かった級の音楽知りたい。
邦楽の元ネタ
日本の音楽の元ネタ、オマージュと思われる楽曲を幾つか列挙してみる。
おはようミカ/毛皮のマリーズ
元ネタ:Sympathy For The Devil/The Rolling Stones
あらゆるバンドからあらゆるフレーズを拝借しまくっている毛皮のマリーズの初期の曲。ストーンズのギターソロをほぼそのままに引用しているが、スリーコードのどシンプルな曲に見事にマッチしている。
毛皮のマリーズはまずこの「おはようミカ」が収録されているFaust C.D.から聞くべきだと思う。個人的には後期毛皮のマリーズ〜ドレスコーズよりも、初期のロックンロールを鳴らしている毛皮のマリーズを推したい。
モノクロトーキョー/サカナクション
元ネタ?:Sous Les Etoiles/Little Majorette
『バクマン』の映画音楽からパリコレのサウンドディレクションまで方々から引っ張りだこなサカナクションもとい山口一郎。
モノクロトーキョーのイントロのフレーズが、スウェーデンのバンドLittle MajoretteのSous Les Etoilesの2:15〜のフレーズと丸かぶり。
サカナクションの楽曲の方がLittle Majoretteよりもリリースが前である為、おそらく偶然。それにしてもめっちゃ似てる。
Mirror Dance/androp
元ネタ:Star Guitar/The Chemical Brothers
イントロで鳴るハンドクラップからのバスドラ、音数が増えていく展開がそっくり。
Changes/SALU
SALUの『changes』1:20〜が、Porter Robinson『Flicker』のイントロに似ている。勘違いである気がしなくもない。とりあえずどちらもいい曲。
2015年のソニックマニアでPorter Robinsonのライブを初めて見たが、キラキラしていてざらついた楽曲がRPGゲームのようなVJがマッチして、とにかく多幸感に包まれていた。あれはもう一度生で見たい。
Maybe I Can't Good-Bye/平野綾
元ネタ:Song 2/Blur
平野綾のある曲がblurのsong2丸パクリという、ただそれだけ。
どうでもいいけど曲名もgood-byeの前にsayが抜けてる。
everybody feels same/くるり
元ネタ:A-Punk/Vampire Weekend
イントロはほぼ一緒で、PVの雰囲気までそっくり。日本のベテランバンドが海外の若手バンドをパクった上、映像も曲も本家の方が良いと思う。少し悲しい。
Vampire Weekendは『Cousins』も低予算感溢れるおもちゃ箱みたいなMVが見ていて楽しい。
New Animal/The Pillows
元ネタ:Atlas/Battles
Battlesの『Atlas』のMVを上っ面だけパクった曲。ドラムの色や鏡など、ただそのままデザインを引用しており、オマージュではなくパクリと表現した方がしっくりきちゃう。リスペクトもへったくれもないバイブスだけ伝わってきて、肝心の曲も微妙。
Battlesが3人になってからのライブも楽しかったけど、やっぱりタイヨンダイがいるBattlesを生で見たかった。
OPEN WORLD/another sunny day
元ネタ:Modern Vampires Of The City/Vampire Weekend
こちらは曲ではなくジャケット。ストレイテナーのナカヤマシンペイ、大山純らが在籍するバンドがVAMPIRE WEEKENDのアルバムから拝借。発売されたばかりのアルバムのジャケットをそのままコピーペーストといった塩梅で、しょうもない。曲もご多分に漏れず微妙。
偉そうにたらたら連ねてしまってたいへん恐縮ですが、色々と発見があって面白かった。また元ネタや似ている楽曲を見つけたらさらに彫り下げてみたい。